「いじめは誰のせい?」元いじめられっ子の精神科医が出した結論

SN校内新聞編集部です、お久しぶりです!

仕事から疲れて帰ると、あー学生時代に戻りたい、なんて思ってしまうことありませんか?もし戻れるのなら、私は小学生の頃に戻りたいです。あの頃の放課後は今のアフターファイブよりずっと長く感じました。でも、中学生の頃にはあまり戻りたくありません。通っていた学校でいじめがあったから。

私は直接の被害者でも加害者でもありませんが、それでもあの居心地の悪さは決して忘れられません。

図書館で座る席がなくて、たまたま座った児童書コーナーの低いスツール。その向かいの棚にあった「いじめ」のコーナーに、中井久夫先生の書いたこの本を見つけました。いわさきちひろさんの挿画にも負けない優しいことばのつらなり、そしてそれと少しも矛盾しない明快さ、恐るべき本と出会ってしまった、と震えました。

先生も、そして生徒さんも、この本だけでも読んでくれたら!

要約してしまうと、ちっともこの本の魅力が伝わらないことはわかった上で、ほんの少しだけ。

中井先生は、いじめは極めて政治的だと言い、その侵攻のプロセスは、

①孤立化→②無力化→③透明化、だと言います。

①の孤立化は、いじめられっ子と一緒にいたら自分もいじめられるかも、とみんなを不安にさせることから始まり、ささいなクセやからだの特徴などをあげつらい、「(彼、彼女は)いじめられても仕方がない」と先生も含めた周りの人々に思わせること

②の無力化は、いじめられっ子を暴力によって萎縮させたり、大人に頼ることは恥ずかしいこと、という考えを植え付けたりして、反乱の芽を摘むこと。

③の透明化は、いじめが周りの人にとってもいじられっ子にとっても日常となってしまい、繁華街のホームレスのように、見えているのに、見えなくなってしまうこと

こうして書いてみると、いじめが一見恣意的に思えて、恐ろしいほど巧妙なことがわかります。

中学生の頃、「いじめられる方にも原因があるのでは」と言って先生に怒られたことがありましたが、まさに①孤立化の術中にはまっていて、まんまと片棒をかつがされていたようです。猛省と共に、良い先生に巡り会えたことに感謝ですね。 

(そして今思えば、無意識とは言え、私と同じようにいじめに荷担してしまっていた先生もいましたし、生徒から逆にいじめにあい、豹変してしまった先生もいらっしゃいました。)

この本を読んだり、読んだひとから説明されたりしても、それで明日からいじめられなくなるというわけではありません。

それでも、「いじめとはなにか」がわかれば、いじめられる自分や、いじめっ子を客観視できますし、何より"先輩いじめられっ子"の優しい言葉に、勇気づけられるいじめられっ子は少なくないと思います

この記事を読んで下さっているのは先生方ですが、この本ないしこの本の教えが、多くの子供達のもとに届くことを願っています。

 

また、この本にはもとになった別の文章があって、それが『いじめの政治学』という論文です。正直に言えば、こちらの方が美文家としての先生の魅力的が発揮されていておすすめです。でも、子供たちにとっては難しいかも。先生方へはおすすめです!